◎ 自己株式 (金庫株) の
 取得・譲渡・消却の税務処理



相対取引で自己株式を取得した場合 譲渡・消却した場合の <個人・法人の税務>



◆ 自己株式を <取得 ・ 譲渡 ・ 消却> した場合の処理


<取 引 事 例>
  甲株式会社 (発行済株式数 400株 : 資本金 2000万円、利益積立金 6000万円) は、
   個人 A株主から相対取引により、自己株式 (200株) を取得することとなった。
なお、A株主の200株の取得価額は800万円である

 (1) A株主からの自己株式の売買価額は4000万円となるが、A株主の課税関係は?

 (2) また、甲株式会社は、上記の自己株式の内、150株を2250万円で譲渡した場合は?

 (3) 甲株式会社が、残りの自己株式 50株を取締役会決議で消却した場合は?


● (1) 法人が、自己株式(200株)を、4000万円(1株:20万円)で取得した場合


交付金 4000万円

資本金 2000万円利益積立金 6000万円

取得価額 800万円 


会 計 処 理
譲渡した個人取得した法人
 現 金 4000万円 / 株 式 800万円
           / 譲渡益 3200万円
 自己株式 4000万円 / 現金 4000万円


税 務 処 理
譲渡した個人取得した法人
 現 金 4000万円 / 株 式 800万円
           / 譲渡益 200万円
          /みなし配当3000万円
資本金等の額 1000万円 / 現金 4000万円
 利益積立金 3000万円 /    
  • 減算する資本金等の額 (取得資本金額)
      (資本金 2000万円/発行済株式数 400株)× 取得株式数 200株=1000万円
  • 減算する利益積立金額
      取得対価 4000万円 − 減算する資本金等の額 1000万円=3000万円

  • (注) みなし配当 (配当所得) に係る源泉所得税は、仕訳上、考慮していません

    (※) 会計上は 「自己株式」 として処理するが、税務上は 「自己株式」 を認識せず、資本の払戻し (資本金等の額の減額) と利益の払戻し (利益積立金額の減額) として処理



    ● (2) 法人が、自己株式の内150株を、2250万円(1株:15万円)で譲渡した場合

    法 人 の 会 計 処 理
       現    金   2250万円  /  自己株式  3000万円
      自己株式処分差損 (注)
      (繰越利益剰余金) 750万円 /       

    (注) 会計上、自己株式処分差損は 「その他資本剰余金」 から減額しますが、
    マイナスとなるので、期末において「その他利益剰余金」(繰越利益剰余金)から減額



    税 務 処 理
      現    金   2250万円   /  資本金等の額 2250万円

    (※) 税務上、自己株式の取得時に 「自己株式」 を認識しないので、譲渡時に譲渡損失が生じた場合でも、譲渡対価の額に相当する 「資本金等の額」 を増額する



    ● (3) 法人が、残りの自己株式 (50株) を、取締役会決議で消却した場合

    法 人 の 会 計 処 理
        自己株式消却額       /  自己株式  1000万円
     (繰越利益剰余金) 1000万円 /       
    20万円 (1株当たりの会計上の帳簿価額)
        × 50株 (消却株式数) = 1000万円


    税 務 処 理
    (処理なし)

    (※) 税務上、自己株式の取得時に 「自己株式」 を認識しないので (取得時に消却したものと同様になる)、自己株式を消却した場合には、処理は不要


    (※) 上記いずれの場合も、会計処理と税務処理が異なるので申告書での調整が必要です




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    自己株式の取得が原則 自由となり、その取引は資本取引とされました。
    相対取引の交付金額のうち、資本金等の額を超える部分に対応する金額についてはみなし配当(配当所得)となります。




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    tel: 06-6681-2144  税理士 服部行男
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