「ぐぇっ!」
腹に急に加えられた衝撃で俺は夢から覚めた。
腹の上を見るとにこにこと笑うルーミィがいた。
「くっりえー!おっきろぉーー!」
ぽんぽんと、両手で俺の腹を叩いている。
さっきの衝撃はこれが原因か?
いや、ルーミィの両手で与えられる衝撃にしては強いものだった。
……とすれば……
「ルーミィ…また、飛び込んだな…?」
少しかすれた声で尋ねると、えへへーと反省の色の無い顔。
まったく、危ないから人のいるベッドに飛び込むなとあれほど言っているのに……
呆れてルーミィを見ると、今度はゴロゴロとまだ痛む腹の上を転がり始めた。
「くりえー、めずあしーね。こんなに、寝てうなんて。」
「…仕方ないだろう?昨日は遅かったんだから。」
「なにしてたの?」
「バイト。」
「ふぅーん。」
「だから、疲れてるの。もう少し寝かせて。」
「えぇー、れも、もう、おひうごはんだよーってぱぁーるが言ってうよ?」
「えぇ?!」
俺は慌てて上半身を起こし、しベッド横の窓のカーテンに手を伸ばし開ける。
同時に差し込んできた光がまぶしい。
通りで寝起きの悪いトラップも居ないはずだ。もう昼なんだ。
…ずきずきと痛むのは、腹だけではなく、頭もだ……寝すぎたか…。
「くりぇー?あたま、いたいんかぁ?」
思わず頭を押さえたからか、ルーミィが心配そうに覗き込んできた。
「……大丈夫だよ。それより…そこ、どけてくれないか?着替えるから。」
「んー。」
ルーミィは間延びした返事をして、ゴロリとベッドに体を移動させた。
俺はベッドから出て、パジャマのボタンをはずし、シャツを脱いだ。
じぃーっと視線を感じ手を止めた。
視線の主はベッドの上から俺のほうを見るルーミィ。
何がおもしろくてそんなに見ているんだろうか。
……まぁ、いいや、気にしないでおこう。
再び着替えはじめると、トンとベッドからルーミィが降りる音が聞こえた。
昼ごはんと言っていたし、先にパステルたちと猪鹿亭に行くつもりだろうか?
ぼんやり考えていると、
「…痛ッゥゥ!!」
下腹に激痛が走った。
見ると、ルーミィが最近のクエストで出来てしまった傷を触っていた。
「……なにしてるの?」
「……また、ふえた。」
「え?」
「きず、また、ふえてる。こえ、しあないよ?また、みんなにないしょにしてた?」
……あぁ、心配かけたくなくて、内緒にしていたのに…見つかってしまった。
じっと責めるような視線が俺に突き刺さる。
「ごめん。心配かけたくなかっただけだから、そんな目で見ないで。」
「……ねぇ、くりぇーは、ルーミィがけがして、しんぱいしちゃヤダって、ないしょにしたら、どうおもう?」
「そりゃ、怒る!内緒にされたら、傷を治せないじゃないか!!」
……あ。
彼女に向けて発した台詞は、きっと、彼女自身が俺に言いたい言葉。
あぁ、なんて、バカだったんだろう。
皆を心配する気持ちは、それは皆から俺に向けられる気持ちでもあったんだ。
「ごめん。……うん、そうだね。キットンに傷薬貰わなくちゃな。」
ぽんっとルーミィの頭に手を置くが、彼女の口はへの字のままだ。
「…どうした?内緒はやめるって約束するから、そんな顔するなよ。」
俺の言葉にふるふると首を横に振って、
「ちやーぅの。さっき、ぼんって、ごめんあしゃい…きず、いたい?」
「…ルーミィもおれも、ごめんなさい。だから、おあいこ。」
「…おあいこ?」
「うん。そう、おあいこ。」
その言葉に少し小首をかしげて、こくんと彼女は頷いた。
「うん!ごめんなしゃいのあとは、しないんら。くりぇー、ないしょ、やめるね?」
「うん。ルーミィは人の居るベッドに飛び込まないこと!」
「うん!!やくそくらおう!」
ルーミィが俺に差し出した小指に自分の小指を絡ませた。
「やーくそーくげーんまーん」
「うしょついたら、はりせんぼーんのーましゅ!」
「「ゆびきった!」」
ぽんと指切りをして、にぃっと笑いあう。
「んー、れも、今度からくりぇー起こしゅとき、どうしよう…?」
ルーミィの質問に思わず苦笑いしてしまう。
そんなこと、滅多にないことだろう?
でも、本気で考えているルーミィにそれは言えないな。
「ルーミィが俺に起こして欲しい方法でいいんじゃないか?」
「ルーミィが?」
「そうそう。例えば、今日のルーミィみたいに俺がルーミィを起こしたら痛いから嫌だろ?」
「んー?」
彼女は人差し指を顎にあてて、考えるポーズをした。
……いや、そこまで考えなくても、さっき痛かった?と聞いたのだから分かるだろう。
しかし、彼女の答えは、
「……ルーミィ、おなかにきずないし、やってもらわないと、わっかんないおぅ?」
思わずガクッとなる。
わ、わかんないって。
傷が無くったって痛いことくらい、想像したらわかるだろう?
だって、その小さな体に………
「くりぇー?ろうしたんらぁ?やっぱい、調子わるいんかぁ?」
同じことをやられたら?
―――― 想像させたらダメだった。
ファイル作成日:2011年11月 5日
とりあえず、「早く昼飯に行けよ!」とつっこめばいいと思います。
クレルーはクレイキャラ壊しが前提です!(キリッ!)
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