「くりぇー、こえ、直して!」
ルーミィからぐいっと差し出されたのはピンクのリボン。
二つに結われていた髪は、リボンを失いふわふわと海風に遊ばれていた。
「いいけど……パステルはどうしたんだい?」
「探してたけど、くりえーが先にいたんら!」
なるほど。パステルを探している途中に俺がいたわけか。
苦笑して俺はルーミィを抱き上げ、すぐそばにあった椅子に座わり膝の上に乗せた。
「リボン、頂戴。」
「うん!」
手渡されたリボンを口に咥え、海風に遊ばれ少し縺れてしまった髪を手で梳かしてやる。
ふわりとシャンプーと海の香りが鼻をくすぐる。
「〜♪〜〜♪」
ルーミィの上機嫌な鼻歌と波音が優しく耳に入ってきた。
穏やかな音色が心地よい。
………このまま時間が止まってしまえばいいのに………
「くりぇー?」
くるりとルーミィが振り返ると同時に右手に持っていた髪の毛が逃げてしまった。
「どうしたんらぁ?手がとまってうお?」
「…ご、ごめん。ちょっと考え事してた。」
「もう、しっかりしておね!」
ぷりぷりと怒りながら再びルーミィは正面を向く。
ほっとため息をつき、もう一度シルバーブロンドに手を伸ばす。
……少しドキドキするのは、緊張しているのだろうか?
今まで何度も何度も彼女の髪を結うことなんてしてきたはずなのに…
気を取り直すため、ふぅっと深呼吸して髪を結う手を早めた。
「はい、できたよ。」
髪を結い直し終え、ぽんとルーミィの背中を叩く。
「ありあとーー!」
ルーミィは嬉しそうにお礼を言い、ぴょんと膝上から降りてくるくると回った。
「くりぇー、かわいい?」
ぴたっと回るのを止めて小首を傾げる姿にドキリと心臓が跳ねた。
「あ、ああ。かわいいかわいい。」
「えっへへーー!さあわえないよう、きをつけなきゃ!」
「へっ!?」
「かわいくしすぎうと、さあわれるんだおね?くりえー、いってたもん!」
「……あぁ、だから、一人でうろちょろするなよ?」
優しく頭をなでてやると、ルーミィはうん!と頷いた。
……あの時どうして、あんなこと、言ってしまったんだろう?
パステルの言うように、父親気分だったら……どんなに良かったか。
そんなにかわいくしすぎたら
―――― 俺の心が君にまたさらわれてしまって、困るんだ。
ファイル作成日:2011年11月 8日
新FQ17巻の台詞を深読みしすぎた結果です。
またさらわれると困るの前に一マス空白あるのが、深読みポイントです(ぇ
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