〜ちいさなかくれんぼ〜



秋もそろそろ終わる頃のお話です。

ルーミィとシロちゃんが、みすず旅館の庭で遊んでおりました。
ルーミィはシロちゃんに落ち葉をかけたりしてます。
シロちゃんのふあふあの毛には、たくさんの葉っぱがくっついてしまってます。
ルーミィはふと楽しい遊びを思いつきました。
「ねぇねぇ、しおちゃん。」
「何デシか?ルーミィしゃん?」
「かくえんぼ、しおうお!」
「かくれんぼデシか。」
「しょおしょお!」
ルーミィは大きい瞳をいっぱいキラキラさせました。
シロちゃんは、ルーミィが喜ぶと嬉しいので、
二つ返事でOKしました。
「分かったデシ!どこで遊ぶデシか?」
ルーミィは、ちょっと考えました。
みすず旅館でかくれんぼしても、すぐ見つかってしまうだろう、
と考えたルーミィはちょっと先の森をさしていいました。
「あしょこ!!」
「え〜っと…え!あの森は危ないデシよ〜。」
「らいじょうぶらお!」
「…」
シロちゃんは、とても迷いました。
なぜならば、あそこはパステルが、
『絶対、あそこで遊んじゃだめだよ』と
耳にたこが出来るほど言っていたからです。
「じゃ、かぞえうお〜〜!いぃ〜ち、にぃ〜、」
「あわわ、ぼく、隠れるデシ〜〜。」
急いでシロちゃんは森の中に隠れました。
しかし、心の中で本当に大丈夫かどうか不安になりました。

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「…きゅうじゅきゅ、ひゃぁ〜く!」
ルーミィは100を数えました。
そして、森の中へシロちゃんを探しに行きました。
「しおちゃん、どこかあ?」
木の下の穴や、木と木の間。
そして、木の上や、ちょっとした穴の中。
いろいろな所を探しましたがなかなか見つかりません。
「しおちゃん、かくえうのじょうずら〜。」
感心して、ぽてぽてと森を歩き回るルーミィ。
実はシロちゃん、ルーミィが心配で後ろをついてきていました。
案の定、ルーミィはどんどん森の奥へ入っていきました。
(あそこの木の根っこに隠れてわざと頭を出して見つかるデシ。)
そう考えたシロちゃんは、急いでルーミィの先回りをして
木の根っこのところに隠れました。
わざと頭が見えるようにして。

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ルーミィはきょろきょろと目をくばります。
すると、ある木の下のほうにふあふあした シロちゃんの頭が見えました。
「あ、あえ、しおちゃんの頭ら!しじゅかにいくお…」
ルーミィは静かに静かにシロちゃんのほうに向かいます。
しかし、ルーミィの歩く音は、シロちゃんの耳には聞こえていました。
シロちゃんは、その音を聞いてほっとしました。
ちゃんとルーミィが気付いてくれたからです。
ルーミィは大きく息を吸い込みました。
「しおちゃん、みぃ〜〜っけ。」
「わぁ!見つかっちゃったデシ〜。」
シロちゃんは、驚くふりをしました。
ルーミィは、とても喜びました。
「しおちゃん、しおちゃん!」
「なんデシか?ルーミィしゃん。」
「ルーミィ、とぉ〜っても楽しかったお!」
「僕もデシ。」
にっこりと二人で笑いました。 同時にルーミィのおなかがぐぅとなりました。
「えへへ。ルーミィ、おなかぺこぺこらお。」
「ぼくもデシ。帰るデシ。」
「うん。」
ふたりは、てけてけ歩きだしました。

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しばらく歩くと見たことのない所にでました。
木も落ち葉もなにもないところでした。
遠くの山もお空も見えませんでした。
二人は、ふしぎなところに迷い込んでしまったのです。
「しおちゃん、しおちゃん。」
「はいデシ。」
「ここどこらお?」
「なんにもないデシね。」
しばらく二人はきょろきょろと周りを見渡しました。
しかし、なにも変わりません。
「どおすう?」
「そうデシねえ。」
シロちゃんが、ちょっと考えようとした時です。
突然、まわりが真っ暗になってしまいました。
「きゃぁ!まっくあになったお〜!」
「る、ルーミィしゃん落ち着くデシ。」
「うぅぇぇぇん!ぱぁぅぅぅぅ。こあいよぉ〜〜〜。」
「ルーミィしゃん…」
「う゛ぇぇぇん。ばあ゛ぅぅぅ。」
シロちゃんは少し困ってしまいました。
でもすぐに気をとりなおしました。
「だ、大丈夫デシ!僕がついているデシ。」
「ひっくひっく。れも…」
「僕は、ほあいとドラゴンデシよ?」
「ひっく。そうらね…ひっく。しおちゃん、つおいもんね。」
「そうデシ!!」
「しおちゃん、しおちゃん。」
「なんデシか?」
「ルーミィ、もう泣かないお!」
ルーミィが袖でぐっと涙をふくのを見てシロちゃんは、
ルーミィが勇気を持ってくれたことを確信しました。
それは、シロちゃんにとって心強いことでした。
シロちゃんは、よく目をこらして周りを見渡しました。
すると、少しだけ光が見えました。
「ルーミィしゃん。あそこにちょっとだけ光があるデシよ。」
「えっと。ほんとら。」
「あそこまで歩くデシよ。」
「うん。」

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しばらく歩くと、二人は明るいところに出ることができました。
そこから、みすず旅館が見えました。
シロちゃんは、ほっとしました。
「しおちゃん、しおちゃん!はあくかえお!」
「はいデシ!」

二人は、走ってみすず旅館まで走りました。
すると、庭でパステルが待っていました。
「ルーミィ!シロちゃん!どこいってたの!?」
「ぱぁぅぅぅぅ!」
「ああ、ルーミィ、鼻水鼻水。」
「あおね、ぱぁるぅ。」
「はいはい。」
「まっくあにあってえ、こあかったんら。」
「いっぱい泣いちゃった?」
「…ルーミィ泣いちゃったお…」
しょぼんとルーミィはうつむきました。
シロちゃんはルーミィが、とっても悲しそうな顔だったので、
パステルに言いました。
「ルーミィしゃんは、ちゃんと自分で勇気を出したデシ。
 だから、強くなったのデシ。」
「そうなの?ルーミィ?」
「うん、そうら。れも、しおちゃんがいてくえたからお。」
「そ、そんなことないデシ。ルーミィしゃんが勇気を出したから
 僕がちゃんとルーミィしゃんを守れたのデシ。」
「そうかぁ?」
「そうデシ。」
ルーミィはにこっと笑いました。
シロちゃんは嬉しくなりました。
「ところで二人とも今日はどこで遊んだの?」
「え!ええっとデシ…」
シロちゃんは、まずいと思いました。
あれだけ注意されていて、あの森で遊んでしまったからです。
「あおね、あおね、」
「うん。」
「ルーミィ、おなかぺこぺこらおう!」
パステルはがくっとなりました。
「ぼ、ぼくもお腹がすいたデシ。」
「そうね、もう夕方だもんね。」
「はいデシ。そうデシ。」
「ごはん食べに行こうか。」
「わぁ〜いわぁ〜い!!」
シロちゃんはちょっとほっとしました。
でも、ちゃんと後でパステルに言おうと思いました。
ちゃんと『ごめんなさい』を言おうと思ったからです。

おわり


MOMOの裏話。

一周年記念の企画を絵本風味に小説化しました。
ちょっと長くなりました。

シロちゃんが、ちょっと(?)子どもっぽくなりましたが、
そういうシロちゃんもいいなぁっと思うのです。
ファイル作成日:2001年12月19日

(C)深沢美潮/迎夏生/角川書店/メディアワークス


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