迷子になりましょう。

今日は迷子日。
だから迷子になってもいいもんねっ!

…なんていったら、トラップに怒られるだろうな。
いや、からかわれるかも。
「だったらいっつも迷子日じゃん。」って。

まぁ、当たってるけどさ。

はぁぁ、それにしてもさ。
どうしてこうも毎回毎回迷子になるんだろ?
ある意味才能なのかもしれない。
…そんな才能、必要ないけどさ。
例えば、トラップみたいにシーフとしての才能があるとか。
クレイみたいに、剣の才能があるとか。
そういうのはとってもいいよね。
二人ともすっごく努力してるんだろうけどさ。

…私も努力したらこの「迷子の才能」なくなるのかな?
そんでもって「マッパーとしての才能」がつくのかな?
そうしたら皆に心配かけなくていい。
迷子日なんてなくなる。
とってもいいことだよね!

ぐっと、手を握るといきなり誰かに腕をひっぱられた。
 
「なぁにニヤニヤしてんだよ!自分の状況わかってのか!?」
「あ、トラップ!」
「あにが、『あ、トラップ!』だよ!ったくまぁた迷子になりやがって。」
すっごく怒った顔。
でもその中に、安心した顔。

「トラップ探しに来てくれるって信じてたよ。」
「あほか!ったくよぉ、こう毎回毎回迷子になるなよなぁ?」
「ご、ごめんなさい。」
「ったく、心配し……してたぞ?ルーミィが。」
「うぅ。」
「ったくよぉ、もうちょい気をつけろよなぁ?」
「うぅぅ。ごめん。」

あぁぁ、泣きたくないのに涙でちゃった。
 
「ばぁか、泣くなって。」
「じゃ、笑う。」

にやらぁって笑ったら気味悪がられた。

「ったく、かえっぞ!」
「はぁい!」
私は差し出されたトラップの手をぎゅって握り締めた。

「ねぇ、これから努力して迷子、治すね。」
「へぇへぇ、ほどほどに頑張ってちょ〜だい。」
「あ、なにその言い方。」
「べっつにぃ。」

もぉ、信じてないなぁ、トラップの奴。
いつか本当に迷子になることなくしてやるんだから!

…全然なくなるってことは…しないかもしれないけどさ。
だって、この才能捨てるのももったいない気がするから。

END


ファイル作成日:2003年5月20日

(C)深沢美潮/迎夏生/角川書店/メディアワークス


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