〜お祭り〜

クエストの帰りに立ち寄った村でお祭りをやっていた。
赤いランプがあちこちにぶら下がっていて、屋台がいっぱい。
あちこちからおいしそうな匂いがするからルーミィったらよだれたらしてる。

「ぱぁーるぅ、わたあめって雲みたいらお!」
「ほんとうだね〜。」
「おいしいんかぁ?」
「うん!甘くておいしいよ。食べたい?」
「うん!たべう、たべう〜!!」

んもう!
そんなきらきらしたブルーアイで見つめられたら、どんなドケチな人でも買っちゃうって!
…いや、私はそんなドケチじゃないけどさ…たぶん
 
「おじさ〜ん、わたあめ一つ下さい。」
「毎度!一つ20Gだよ。」
私はお財布から20Gを出しておじさんに渡した。
「はい、わたあめ。」
渡されたわたあめは思っていたより大きかった。
「はい、ルーミィ。大きいからね〜。」
「うん!ありあと、ぱぁーる!」
ルーミィは口を大きく開けてわたあめをほおばった。
きらきらブルーアイが大きく開く。
「どう?」
「あまぁぁい!ぱぁーるにもあげう!あ〜ん、して?」
「あーん」
雲のようにやわらかいわたあめが口に入ると同時に溶けて消えた。
「どぉら〜?」
「う〜ん!あまぁ〜い!」
「しおちゃんも、あ〜ん!」
「あ〜…わんデシ!」
ついつい「あ〜んデシ」と言ってしまいそうになっちゃったみたい。
あわてて言い直すシロちゃんがとてもかぁいい。


ドン、ドン、ドン


遠くのほうから、太鼓の大きな音が聞こえた。
お祭りのメインイベントが始まったらしい。
体中に響く音がなんだか気持ちがいい。


ドン、ドン、カッ、カッ


「なぁ、近くに行ってみねーか?」
そう言って…いや言い終わる前に、トラップがまるで子供のように走りだした。
ったく、逃げ足だけじゃなくてこういうことにも速いよねぇ…
「あ、わたしも行きます〜!」
イカ焼きをほおばってたキットンもどたどたっとトラップを追いかける。
「ちょっとぉ、誰かにイカ焼きのタレひっつけないでよ〜!」
「はいぃ〜!」
あぁ〜、でもあの様子じゃぁきっと誰かにひっつけるぞ…
「ルーミィもいくぅ〜!」
ぴょんぴょんとわたあめをもってジャンプしてるルーミィをひょいっとノルが肩にのせた。
「わぁ〜い!のりゅ、出発しんこぉだお〜!」
「ルーミィ、ノルにわたあめ、ひっつけちゃダメよ?」
「うん!」
って、いい返事したけど…
あ〜あ、もうすでにひっつけちゃってるよ。
それでもニコニコ笑ってノルは走りだした。
「パステル、俺たちも行くぞ!」
「え?あ、うん!シロちゃん、行こう!」
「わんデシ!」


ドン、ドン、ドン


体中に響く音。
近くになるほどにまるで地震でも起きてるんじゃないかっていう振動が伝わる。

「おっせぇぞ、おめぇら。」
「はぁはぁ、んもぉ!勝手に行って遅いってなによ!」
「まぁまぁ。それより、あれ。見てみろよ。」
「え?ふぁぁ!」
クレイが指差した先には大きな大きな太鼓があった。
叩いてる人はきっとノルくらいあるんだろうけど、小さく見える。

「大きいねぇ〜!」
「おっき〜!」
「なぁ、あれ踊りか?あんな踊り初めて見たぜ!」
トラップが周りで踊っている人たちを指した。
「そうでしょう。その土地その土地でいろんな踊りがありますからね〜。」
「ふぅ〜ん。ま、なんでもいいや!まざろうぜ!」
トラップが勢いよく私の腕を引いた。
「ちょっと、ちょっとなんで私なのよ!?」
「あぁ?そこにいたから。」
「な、なにそれ〜?」
「いくべ、いくべ!」
んもぉ!勝手なんだから!

ルーミィはノルから降りてシロちゃんと踊る。
踊るっていってもルーミィがシロちゃんをだっこしてくるくる回ってるだけなんだけどね。
それがまたかぁーいくて、怪しい人に連れ去られるんじゃないかってくらいかぁーいい。
クレイはパーティのお母さんとしてルーミィたちと一緒にいる。
クレイも私と同じく心配なんだろうなぁ。
ノルとキットンはというと遠めに太鼓を見つめながら談笑している。
「おい!おめぇ、よそみしてっとぶつかるぞ!」
「うわ、はいはい!」
…って、なんだって私がトラップなんかと踊ってんだぁ?


………ま、いいか。


ドン、ドン、ドン、カッ、カッ、ドン、ドン、ドン


太鼓の音は静かな夜に響き続けた

END


ファイル作成日:2004年7月11日

(C)深沢美潮/迎夏生/角川書店/メディアワークス

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