〜ウソ〜
春一番が吹いた夜、雪が降った。
春が近いのかまだ冬なのか、どっちなんだろう。
そんなことを考えてたら眠れなくなってしまった。
私はベッドから降りて窓の方へ行きぼぉっと窓の外を見た。
すると急に窓が開き顔が現れたではないか!
「うわぁ!ト、トトト、トラップ!?」
「し〜!」
トラップは私の口を塞ぎ、ルーミィたちをあごで指した。
ルーミィは「んにゃぁ?」と寝言を言ってすやすや寝てる。
よ、よかった。起こしてないみたい。
「ったく、きぃつけろよな?」
「ご、ごめ…って、あーたがびっくりさせたからでしょ!?」
「んあ?」
「いきなり窓から出て来るんだもん。」
「あっそ。」
「あ、あっそって…」
「それより、なにボケーっとしてんだよ。風邪ひくぞ?」
「風邪ひくのはトラップの方だよ。こんな寒いのに外にいるなんて。」
……そういえば、なにしてるんだろ?
またギャンブル帰り?
だったらなんで木の上にいるんだろ?
玄関に鍵が閉まってて窓から入ろうとしたのかな?
だったらなんで私の部屋から?
…ま、まさか…
「奇麗。」
「え?」
ドキドキ。
「………外。」
「は?」
「みてみそ?」
私は言われるがまま外に体を乗り出し外を見る。
…普通だけどなぁ?
「なんて、な。」
トラップは二カッと笑って、ひょいっと部屋に入り込んできた。
「え?えぇ?」
「助かったぜ〜!」
「は?」
「カジノから帰ったものの、玄関の鍵がしまっててさ。」
「……で?」
「んで、窓から入ろうとしたけど、クレイ達は窓の鍵閉めてるしさぁ。」
「あ、開ければいいじゃない。シーフなんでしょ?」
「そう思ったけど、誰かさんのまぬけな顔が見えたからこっちにしたんだよ。」
「ま、まぬけですってぇ!?」
「し〜!」
思わず大声になってしまった私の口をトラップが塞ぐ。
あわわわ!また、ルーミィ達を起こしそうになっちゃった。
トラップは「きぃつけろよな。」と言う目。
あぁーたのせいだって。もぅ。
にらみつけてやると
「ま。とにかくだ。助かったぜ?」
とぽんぽんっと頭を叩いた。
「んもー、玄関の鍵が閉まる前に帰ってきなさいよ!」
「へぇー、へぇー。」
トラップはそう返事して上着を脱いで私の肩にかけた。
ぽかんと彼を見上げると、デコピンされた。
「おめぇも鍵くれぇ閉めて寝ろよな?襲われるぜ?」
「う…、寝る前に閉めるのよ!」
「あっそ。まぁ、襲うような奴じゃねぇけどな。」
「んなっ…!」
「じゃ、オヤスミ〜!」
トラップはひらひらと手を振って部屋をでた。
な、なんなんだ、もお!
失礼なやつめ!
私は窓の鍵を閉めようとして、手を止めた。
外の雪がまるで星が降るようにキラキラしてたから。
…そっか、さっきまでは月が雲に隠れてたからキラキラしてなかったんだ。
トラップ、本当はギャンブルじゃなくてこれを見てたんじゃないかな。
………だって、この村、カジノないもん。
トラップの上着を両手でかき寄せた。
「…嘘つき…」
上着はまだ暖かかった。
END
ファイル作成日:2005年4月2日
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