st.worker
ある村にバイトに来た私たち。
その村ではスマスリクという祭りがあるの。
その祭りは村中を飾り付けするの。
私たちは飾り付けのお手伝いをすることになったの。
シルバーリーフから近いし、バイト料も結構いいし。
だって、宿代と食費がいらないんだよ!
それに、お祭りにも参加できるの!
最高の条件だよねっ!
…そう思ったのは、そう、数日前だったけ。
お祭りに参加できる。
私の想像…いや、みんなの想像ではね。
キラキライルミネーションの中、ワイワイと美味しいもの食べて。
ダンスして、宴を思いつつ眠る。
そんなふうに参加すると思ってたんだけど。
世の中そんなに甘くないよねぇ。
私とルーミィは天使の姿。
トラップとクレイは、祭りの主役の姿。
ルーミィとシロちゃんはトナカイの姿。
キットンとノルは、警備員の姿。
私の手にはそれぞれの仕事場の配置地図。
そう、アルバイターとしての参加だったんだよね。
「詐欺じゃねぇか!」
ってトラップは怒ってたけどさ。その気持ちわかる。
広告には確かにこうかいてあった。
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アルバイト募集
・時給100G
・宿代・食費付
仕事内容は、飾り付け等。
子供でもできます。
お祭りにも参加。
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お客として参加できるって勘違いしてもしかたないよね?
でもでも。社長いわく。
「アルバイトとして参加なのです。飾り付け等って書いてるでしょ?」
…確かにね。
「上手いはなしにゃ裏がある」ってやつだろうな。
そういえば、キットンが言ってたっけ。
「時給がいいのに、希望者がいなかったのでしょうか?」
すぐに6人即採用でうかれたし。
そんなに気にしてもなかったけどさ。
時給がいいのに、希望者がいないってことは。
資格とかが必要だったりするから。
でも、この仕事は飾り付け。
子供のルーミィでも採用しちゃうくらいだもん。
じゃあ、なんで希望者が少なかったか。
村の人が、アルバイトしてないか。
そんなの簡単。
お祭りに参加したいからなんだよね。
現に集まったバイトは私たちだけだったもん。
「まぁ、いいじゃないか。」
ニコニコクレイが私たちをなだめる。
「アルバイトでも結構楽しめるかもしれないし。」
「そ、そっかなぁ?」
「それに、夢をあたえる仕事だしさ!」
キラキラ瞳でどっか遠くを見つめる。
あ〜あ。こりゃ五分ほど、戻ってこないぞ。
「ま、なんにせよ、金は貰えるし。それぞれ配置につこうぜ。」
そう言うとトラップは配置地図を私から取り上げた。
「あぁ、トラップ!」
「方向音痴マッパーさんが見てもわかんねぇだろ?」
「うっ。」
「オレはすみずみまで歩いてるからな。」
「…仕事サボって?」
「アホ。休み時間にだよ!」
まぁね。
ブツブツ言いながら、ちゃんと仕事するし。
「マッパーなら、そのくらいしとけよ!」
「ふひゅぅ〜ん。」
しょぼんとした私を無視して、トラップは進行した。
「えっと、キットンとノルはこのでけぇモミの木の下。」
「分かった。」
「はい、了解です。」
「一番人がたくさんくるらしいからな。きぃつけろ。」
一番人が来るところだからこそ、警備員が必要なんだろうな。
「ルーミィとシロとクレイはこの角を右に曲がったおもちゃ屋の前。」
「わかったおう!」
「がってん承知デシ!」
「了解。」
「ルーミィとシロは多分、あれだな。」
「なんら?」
「らぶり〜大作戦。」
「らぶり〜大作戦ってなによ。」
「だってよぉ、周りみろよ。」
トラップに言われまわりを見る。
奥様方がキラキラした目でルーミィとシロちゃんを見ている。
まぁね。
ルーミィとシロちゃんのコンビがいたら、入りたくなっちゃうよね。
かぁいいし。
「じゃ、オレは?」
「ルーミィとシロの子守りと見せかけ、やはり客寄せ。」
そうだろうな。
女の子たちが憧れの王子様を見る目で見てる。
まぁ、その中にはトラップを見てる人もいるけどさ。
後でナンパでもするのかもしれないなぁ。
クレイはともかくトラップは絶対に気付いてるから。
「パステルは、左に行ってちょっと行った道路の真中につったてろ。」
「道路?なにするの?」
「飴を配るんだ。ま、客寄せにもなんにもなんねぇってことだな。」
「ひ、ひっどぉ〜い。そういうトラップはなんなのよ?」
「迷子救急センター。」
「は?」
「迷子になった奴を保護するんだ。」
「えぇ〜。一人で?」
「まさか。オレだけじゃなくて村の青年団もやる。」
ふぅん。
まぁ、このパーティの中じゃ一番この村の地理に詳しいみたいだし。
「じゃ、それぞれ頑張りたまえ!」
「おう!」
クレイが一人答えて、ルーミィとシロちゃんを連れていく。
クレイが一緒なら安心できる。
キットンとノルは早速警備につく。
ノルはともかく…キットンは大丈夫かな?
大きな人に潰されるんじゃ?
でも、それはいらぬ心配だった。
キットンは高い警備台に上って、警備し始めた。
「じゃ、オレは迷子探しにいくとすっか。」
「がんばってね。」
「けっ。いっつも迷子探ししてるから、苦にもならねぇ。」
がぁ〜ん。
それって私のことだよね?
まぁ…本当のことだけどさ。
「おめぇは迷子になるなよ?動くなよ?」
「うん。分かった。」
トラップは「ふむ、よろしい。」という顔して、迷子探しに出た。
よっし、私もがんばるぞ!
立って、飴をくばるだけだけどさ。
ぐっと、ガッツポーズを決めて仕事場に向かう。
仕事場(道路だけどさ。)が見えてきたとき。
ぐいって後ろから誰かに服をひっぱられた。
「な、なによ?トラップ?」
後ろを振り返ると誰もいなかった。
も、もしかして…
「お、オバケ?」
「オバケ?オバケじゃないよ。天使さんだよ。」
「へっ?」
下から声が聞こえたのでうつむいてみる。
そこにはカワイイ子供。
ルーミィよりちょっと大きいけど、まだまだ甘えん坊さんな雰囲気。
「おねぇちゃんは、オバケじゃなくて天使さんだよね?」
「ええ。そうよ。」
「じゃぁ、私のママの所に連れてって。」
「えぇ!?」
「ツキナね、ママとはぐれちゃったの。」
「ど、どこで?」
「えっとねぇ。モミの木のところだよ。」
「あの大きな?」
「ううん。小さいよ。」
ち、小さいモミの木って…いっぱいあるんですけど。
現に周りを見渡したら5個見つかる。
「しょうがない。歩いてみようか?」
「うん!」
ツキナちゃんの手をにぎって歩きだす。
「ママは、モミの木で待ってくれるかな?」
「きっと待っててくれるよ。」
「そうだよね!」
ツキナちゃんはニッコリと笑った。
か、かあいいなぁ。
「ツキナちゃん、お母さんはどんな服きてた?」
「えっとねぇ、黄色い服だよ。スカートは茶色。」
「髪は?」
「天使さんより、短いよ。」
「て、天使さん?」
「おねぇちゃん、天使さんって言ったよ。」
あ、ああ。私のことか。
なんか、照れるなぁ〜。
「あ、天使さんとママの髪の色と同じだよ!」
「へぇ。そうなの。」
もしかしたら、ツキナちゃんは。
私の後姿をお母さんと間違えちゃったのかもしれないな。
「えぇっと、ここ曲がってみようかな。」
「?」
モミの木があるところ全部見てみよう。
それでも見つからなかったら。
またあの大きなモミの木のところへ戻ろう。
「ねぇ、天使さん?」
「え?なぁに?」
「天使さんは、ツキナのママのこと知らないんだね。」
「へっ!?」
「だって、色々聞いたから。」
もしかして、不安にしちゃったのかな。
迷子になるとすっごく不安になるんだよね。
このまま皆にあえなかったらどうしようとかさ。
色々なこと考えちゃう。
「あ、天使さんはね。見習だから覚えられないの。」
「じゃ、ツキナのママ見つけたら、一人前だね。」
「うん。」
ツキナちゃんはまたニコニコして歩き出す。
村にしては大きい商店街。
祭りなだけあって人が多いから気をつけないとね。
黄色い服来た人で私と同じ髪の色の人も見つけなきゃだし。
なかなか、大変なんだなぁ。
「じゃ、今度はこっち。」
「うん!」
商店街を右に曲がった時。
「あ、ママだ!」
「え!?」
ツキナちゃんは私の手を離して、お母さんへと走る。
「ツキナ!」
小さな小さなモミの木。
そこにツキナちゃんのお母さんはちゃんといた。
「もぉ、どこにいたの?」
「ごめんね。ママ。」
ぎゆぅっとお母さんに抱きつくツキナちゃん。
「天使さんに、連れてきてもらったの。」
「天使さん?」
ツキナちゃんのお母さんは私をみた。
「あ、どうも、すみません。」
「あ、いえ。」
ツキナちゃんのお母さんは。
私と同じ髪の色…じゃなくてすっごく奇麗だった。
もちろん、全部奇麗だけどさ。
「ツキナちゃんよかったね。」
「うん!」
「じゃ、私は帰るね。」
「うん!あ、そだ、これあげる。」
ツキナちゃんはポケットから緑色のリボンを二つだした。
「ママにリボンのプレゼント買ったときのオマケだけど…いいかな?」
「もちろんよ!ありがとうね。とっても嬉しい。」
「えへへ。じゃぁね、天使さん。」
「うん、バイバイ。」
私は走って、その場を離れる。
『ママにプレゼント』
そのためにはぐれちゃたんだろうな。
きっと、この後、プレゼントするんだろうから。
だから、急いで離れなくちゃね。
適当に走って、ふと周りをみる。
…あれ?ここどこだっけ?
真っ暗なところ。
イルミネーションすらない。
ってことは。
もしかして、村から出ちゃったとか?
急いで後ろを振り向く。
明かりはちょっと遠い。
そ、そんなに村から離れちゃってたの私!?
とにかく、村に帰らなきゃ。
目印はあの大きなモミの木。
あそこに戻れば。きっと大丈夫。
急いでそのまま明かりに向かって走ると、何かにぶつかった。
「いったぁい。」
「いったぁいっじゃねぇ!おめぇどうしてここにいるんだよ!」
「え!?」
何かはトラップだった。すっごく怒った顔。
「あ、えっと、ちょっと天使をやってました。」
「はぁぁぁぁ?」
「迷子になってる子がいてね。送ってあげたの。」
「それでお前が迷子になってどうするよ。」
はぁって、呆れたため息。
そ、そりゃさぁ。確かにそうですけど。
「トラップはどうしてここにいるの?」
「おめぇがいなかったからな。どうせ迷子になってんだと思って。」
「………。」
「ったくよぉ、村の青年団がいるから、探せたんだぜ。」
「あぅぅ。」
「オレだけが迷子救急センター係だったら、こなかったぞ。」
「うぅぅ。ごめんなさい。仕事中なのに。」
「休憩中に来た。」
「え?」
「おめぇのために仕事ほっぽりだすかってぇの。」
「ひ、ひっどぉ〜い。」
「なにがひどいだ。オレだって休憩したかったぜ。」
「うっ。」
仕事でもないのに迷子探しさせちゃったんだね。私。
迷子の人を探すのって結構大変だよね。
「この格好じゃ、子供たちに追いかけられるしなぁ。」
「お祭りの主役だもんね。」
「クレイも苦労してるだろうなぁ。」
「でしょうね。」
「ま、一番苦労してるのはオレだな。」
「どおして?」
「ぶぁ〜か、おめぇを探したからに決まってるだろ。」
「うぅ。」
「まさか村の外にでるとはな。」
「もぉしわけございません!」
「おめぇのために村中を覚えたのに意味ねぇじゃん。」
「あぅあぅあぅ〜。お詫びにこのリボンあげる。」
私は、さっきツキナちゃんから貰った緑のリボンの一つを渡した。
「男にリボンってよぉ…。」
はぁって大ため息。
でも、まんざらでもない様子。よかったぁ。
「よっしゃ、帰るか。」
「うん。あ、トラップ。」
「ん?」
「ここから見たら、村がモミの木みたい!」
「…女ってロマンチストだな。」
呆れた顔してるのかなってトラップのほう見たら。
なんだか、とってもいい笑顔だった。
おわり。
******** special thanks ********
題、ネタともに沙石様から頂きましたv
ありがとうございます。
ファイル作成日:2002年12月19日
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